玄米はおかずいらずと呼ばれるほど栄養豊富な食品です。しかし、白米を炊くときよりも長い浸水時間が必要なので、時間がないときはすぐに食べられないと思っている方もいるのではないでしょうか。
玄米は「びっくり炊き」という方法で短時間で炊くことが可能です。今回は、失敗しないびっくり炊きの簡単な方法や注意点について解説します。
玄米のびっくり炊きとは?
びっくり炊きは、江戸時代に秋田から伝わったと言われている昔から存在するお米の炊き方です。豆や麺類を茹でるとき、吹きこぼれ防止のために差す水のことを「びっくり水」と呼びますが、これがびっくり炊きの由来となっています。
玄米のびっくり炊きとは、通常どおり玄米を炊いて水が少なくなったところに、もう一度水を加える方法です。
びっくり炊きで炊く玄米の特徴やメリットを3つ紹介します。
- 柔らかくモッチっとした食感に仕上がる
- 浸水する時間がなくても炊くことができる
- 鍋を使えば時短になる
一つひとつ見ていきましょう。
1.柔らかくモッチっとした食感に仕上がる
硬いイメージが強い玄米ですが、びっくり炊きで炊くと柔らかくモチっとした食感に仕上がるため、玄米が苦手な方にもおすすめです。
2.浸水する時間がなくても炊くことができる
玄米を浸水させなくても炊くことができる点は、びっくり炊きの最大の特徴ともいえるでしょう。通常の方法で玄米を炊く場合は数時間吸水させる必要があるので、時間がないときは諦めてしまう人もいるかもしれません。
しかし、びっくり炊きなら水でさっと洗う程度ですぐに炊けるだけでなく、普通に玄米を炊いたときよりもふっくらとした炊き上がりになります。
浸水させなくても良い理由は、玄米の硬い皮が柔らかくなったところにびっくり水を加えることで、皮が破れて水の吸水率がぐんと上がるからです。
3.鍋を使えば時短になる
一般的に、玄米をびっくり炊きで炊くのであれば鍋を使用します。炊飯器でも可能ですが、2度炊飯しなければならないため、より簡単に短時間で炊くには鍋が最適です。
土鍋や圧力鍋がなくても、普段使っているステンレスやホーロー鍋で問題ありません。
玄米のびっくり炊きの炊飯手順 6ステップ(約50分)
玄米のびっくり炊きの炊飯手順を6ステップで解説します。準備から炊きあがりまで約50分程度で完了です。
1.玄米を水洗いする(浸水不要)
びっくり炊きの場合はびっくり水によって玄米に水分を含ませるので、浸水が必要ありません。玄米に付着している汚れを洗い流したら、すぐに炊飯できます。
2.玄米の容量の1.77倍の水を鍋に入れる
鍋に「玄米」と「玄米の1.77倍の量の水」を入れます。水の量は、以下を参考にしてください。
- お米1合(150g)の場合、水265.5ml
- お米2合(300g)の場合、水531ml
- お米3合(450g)の場合、水796.5ml
玄米の表面を覆っている層のことを「ロウ層」と呼びます。ロウ層は防水性が高いため、水の吸収を妨げます。そのため、玄米は白米よりも多めの水を加えないとふっくらした炊き上がりになりません。
3.強火で沸騰させ中火にする(15分程度)
まず鍋に玄米と水を入れて沸騰するまで強火にかけます。吹きこぼれそうになったら中火にしてください。水分が飛ぶまで、中火~弱火で15分程火にかけます。
4.パチパチ音がしてきたタイミングで水を追加する
15分ほどすると、パチパチという音がし始めてくるので、このタイミングでびっくり水を加えましょう。玄米の約1.0~1.2倍のびっくり水を加え、よくかき混ぜてください。びっくり水の量は、以下を参考にしてください。
- お米1合(150g)の場合、水150~180ml
- お米2合(300g)の場合、水300~360ml
- お米3合(450g)の場合、水450~540ml
5.沸騰したら弱火にする(15~20分程度)
再び沸騰させたら蓋をして、15〜20分弱火にかけます。一度目と同じようにパチパチと音が聞こえてきたら炊き上がりのサインです。
6.火を止めて蒸らす(10分)
火を止めた後は蓋をしたまま10分以上蒸らしましょう。蒸らし後は底の方から全体をさっくり混ぜたら完成です。
玄米のびっくり炊きに失敗する2つの原因
手軽で簡単にできるびっくり炊きですが、実際挑戦してみると「パサパサになってしまった」「ベチャついてしまった」など、失敗してしまうこともあるようです。失敗する原因は、主に以下の2つです。
- 水の量が適切ではなかったから
- 火加減の調整が難しいから
失敗せずに時短で美味しい玄米が食べたいと思っている人は、失敗の原因を理解しておきましょう。
1. 水の量が適切ではなかったから
びっくり炊きの失敗で多いのが「硬くてパサパサな炊き上がりになってしまう」または逆に「べちょべちょになってしまう」ケースです。
水の量は、はじめは「玄米の1.77倍」、途中で入れるびっくり水は「玄米の1~1.2倍」です。
鍋で炊く場合、炊飯器とは違い、火加減や鍋の素材によって炊きあがりが異なります。基本の数字を頭に置きながら、ご自身で調整することが必要です。
また、日頃玄米をぬるま湯で浸水させている人は、びっくり水で加える水もぬるま湯の方が良いのではないかと思うかもしれません。
しかし、びっくり炊きとは冷たい水を入れて急激な温度差を生じさせることで、玄米の皮が破れる原理なので、びっくり水には冷水を使いましょう。
2. 火加減の調整が難しいから
玄米を鍋で炊くときは強火で沸騰させ、沸騰後は中火〜弱火に火力を落とす必要があります。しかし、火力が強すぎたり火加減を間違えてしまうと焦がしてしまうため、失敗してしまいます。
鍋の種類で熱伝導率が異なることや、家庭によってコンロの火力が違うことがあるので、火加減の調整は難しいかもしれません。
強火・中火・弱火と言っても、使用する鍋やコンロで差が出る可能性があることを理解しておきましょう。
玄米のびっくり炊きをする上での3つの注意点
びっくり炊きの手順はとても簡単ですが、水の量や火加減で失敗することもあるため、押さえておきたい注意点を3つ紹介します。
- 慣れるまでコンロから離れない
- びっくり水の量は調整すること
- 加熱後はコンロからおろして蒸らす
一つひとつ見ていきましょう。
1. 慣れるまでコンロから離れない
びっくり炊きは火加減がとても重要なので、慣れるまではコンロから離れないようにしましょう。少し目を離している間に吹きこぼれてしまったり、焦げてしまう可能性があります。
最初のうちは焦げ防止のために強火は使わず、強めの中火くらいから始めてみても良いかもしれません。ガラス蓋付きの鍋であれば、蓋を開けなくても中身が確認できるので、初心者におすすめです。
2. びっくり水の量は調整すること
びっくり炊きは、びっくり水の量が炊き上がりの硬さに影響します。びっくり水の量は玄米の約1.0~1.2倍必要であると説明しましたが、量に幅があるのは火力や鍋の種類、好みの硬さなどが異なるからです。
また、新しい玄米であれば水の量は少なめ、古米であれば多めにした方が良いなど、条件によっても必要な水の量は変わります。何度か挑戦して適量を見つけてみてください。
3. 加熱後はコンロからおろして蒸らす
玄米が炊けたら火を消すだけでなく、コンロからおろしましょう。コンロの熱で底が焦げてしまう可能性があるので、鍋敷きなどに置いて蒸らした方が最後に焦がしてしまう心配がなくなります。
特にフッ素加工の施されていない鍋や、保温性が高く冷めにくい土鍋などは、焦げつきやすいので注意しましょう。
びっくり炊きで玄米を美味しく食べよう
玄米のびっくり炊きとは、洗っただけの玄米にびっくり水を加えてふっくら柔らかく炊き上げる方法です。
時間がないときや玄米の硬さが苦手な方におすすめの方法ですが、水や火加減の調整にちょっとしたコツが必要なので、慣れるまでは難しく感じてしまうかもしれません。
しかし、びっくり炊きなら浸水をしなくても栄養満点の玄米が手軽に食べられるメリットがありますので、今回紹介した炊き方のポイントを押さえて、びっくり炊きにチャレンジしてみましょう。
本サイトの「日本全国お米図鑑」では、玄米食に適したおすすめのお米を紹介しているので、以下のバナーからチェックしてみてください!