「こめむすひ」をご覧のみなさん、はじめまして。
東京を拠点にコピーライター兼クリエイティブディレクターとして活動している、岡澤と申します。
出身は三重県ですが、新潟は長岡花火大会や大地の芸術祭、フジロック、佐渡島、スノーボードなど、プライベートで何度も訪れたことがあるとても好きな地域です。
そんな私がはじめて小千谷を訪れたのが、「第2回おぢや棚田米コンテスト」が開催される2ヶ月前のこと。小千谷の友人が2泊3日の小千谷観光ツアーに招待してくれたことがきっかけでした。
そのときは片貝花火大会をはじめ錦鯉鑑賞やサウナ、食、農家民宿での宿泊など、さまざまな体験を通じて小千谷の魅力に触れることができました。「またぜひ遊びに行きたい!」と思っていた矢先に、友人経由で「『おぢや棚田米コンテスト』の特別審査員をやってくれませんか?」というオファーをいただきました。
「お米や食の専門家ではないけど大丈夫だろうか?」と少し迷いはあったものの、お米(日本酒含む)は大好きですし、過去にはコンバインや田植え機など農業機械のカタログ制作に関わっていたこともあり、関心の深い分野でした。何よりも「もう一度小千谷に行くことができる!」という嬉しさが勝り、お受けすることを決めました。
この記事では、「第2回おぢや棚田米コンテスト」に参加して感じたことを、私なりの利点からレポートします。

小千谷の棚田と生産者さんを訪ねて
「第2回おぢや棚田米コンテスト」は2025年11月30日に開催されました。私を含む特別審査員の数名はその前日から現地入りし、棚田や生産者さんの元をめぐるツアー企画に参加しました。
前日までずっと悪天候が続いていたとのことですが、この週末だけ天気が回復!お天道様もコンテストの成功を応援してくれているようでした。
都会に住んでいると見る機会の少ない棚田は、階段状になっている田んぼのこと。土砂災害の防止や生物多様性の保全に役立ち、その美しい景観を観光資源として活用している地域もあります。
今回のツアーではいくつかの棚田を見学しましたが、その中でも高地から見下す棚田の絶景!時期の関係で収穫後の棚田しか見ることはできませんでしたが、田植え期や収穫前はより美しい風景が楽しめるはずです。

棚田めぐりの合間には、若栃エリアで農業を営んでいる「株式会社Mt.ファームわかとち」さんを訪問。事務所や設備の見学をさせていただきながら、事業内容や米づくりにかける想いなどを伺いました。

設備や機械への投資、担い手の不足や高齢化、天候などの状況に左右される収量や味…。お米がつくられ食卓に届くまでには、非常に多くの工程や苦労があるということに、改めて気付かされました。だからこそ、コンテスト本番は「一つひとつの棚田米に真剣に向き合いたい」と思いました。
多くの人たちがコンテストをサポート!
コンテスト当日。会場入りする前に、仕込みの現場を見学させていただきました。
会場で振る舞われる棚田米を炊き上げるために、たくさんのスタッフさんが賑やかに動き回っています。

最終選考に残った棚田米は10種類。どれも丁寧に大切に育てられたことが伝わってきます。

棚田米の研ぎ方や炊飯時間などはすべて統一されていました。これは、調理方法で味や見た目に差が生まれないようにするためとのことです。

生産者さんだけではなく地域のみなさんが多く関わっていること、楽しみながら準備を進めていること。コンテストの裏側を見学できたことで期待がますます高まっていきましたし、小千谷の暮らしに棚田が深く根付いているのだと感じました。
いざコンテスト会場へ!
仕込みの現場を後にして、コンテスト会場である「ホントカ。」に到着。建物内ではすでに会場の設営が始まっており、時間の経過に連れて熱気も高まっていきます。


そして13時、ついにコンテストが開会しました!まずは最終審査に残った生産者さんの紹介が始まります。みなさん緊張した様子でしたが、お米づくりにかける想いやコンテストへの意気込みについて力を込めて語ってくれました。

次に基調講演がスタート。三ツ目株式会社の澤さんが「ふるさと納税がひらく!小千谷産米の可能性」というテーマで話をされました。棚田米の魅力を伝え手にとってもらうためには、その価値を言語化することが大切だということ。ブランディングやPRをするうえで、ふるさと納税の仕組みを活用することが効果的だということ。これらの話に、参加者のみなさんは真剣に耳を傾けていました。私もコピーライターとして価値を言語化する仕事をしているので、講演の内容には深く共感しました。

どれも美味しくて悩みに悩む!
基調講演終了後、数分間の休憩を挟んで、いよいよ審査の時間がやってきました!まずは特別審査員全員の紹介がされ、私も舞台上から審査にかける意気込みをお話しさせていただきました。

その間に会場にはA〜Jまでのアルファベットが割り振られた棚田米が並べられていきます。一般参加者のみなさんは、その中から最も美味しいと思った1種類に投票ができます。
参加は無料ということもあって、地元の方の多くがコンテストに顔を出し、棚田米を楽しんでいる様子でした。

特別審査員は別室に集められ、一つひとつ実食していきます。
評価項目は「見た目」「味」「食感」の3点。そして一般参加者とは異なり、特別審査員は上位3種類に投票することが可能です。そのうえ持ち票が10票あり、1位に5票、2位に3票、3位に2票を入れることができます。一般参加者の10倍の票を持っていることもあり、特別審査員の評価がコンテストの結果を大きく左右します。

棚田米は一口サイズに取り分けられていましたが、しっかりと食べ比べできるように少量ずつ口に含んでいきます。また、アルファベット順に食べると最初と最後が印象に残りやすい気がしたので、食べる順番もランダムにしてみるなど、自分なりに工夫をしてみました。
甘みが強いほうがいいのか、あっさりと食べやすいほうがいいのか…。
形や大きさが整っているほうがいいのか、色は白いほうがいいのか…。
固めのほうがいいのか、やわらかいほうがいいのか…。

食べながら自分なりの審査基準を明確に設定していこうとしたのですが、正直どの棚田米も甲乙つけがたい美味しさ!それでもコンテストという形式上、差をつけなくてはいけません。悩みに悩んだ結果、最終的には個人的な好みで判断させていただきました。
結果発表、そして表彰式へ
投票が終わり、ついに結果発表の時間がやってきました。最も得票数が多かった生産者さんに贈られる「市長賞」を受賞したのは、若栃で棚田米をつくっている樋口さんでした。

次に「会長賞」に3名、「ホントカ。賞」に6名が選ばれました。さらに、課外活動でお米づくりに関わり会場でもお米を振舞ってくれた吉谷小学校の子どもたちには「奨励賞」が贈られました。
受賞されたみなさん、本当におめでとうございます!

講評でも述べさせていただいたのですが、どの棚田米も本当に美味しく、手間と愛情をかけて育てたものだと伝わってきました。今までの人生でこれほど真剣にお米と向き合った経験はなく、ゆっくりと味わいながら、生産者さんたちの営みや小千谷の歴史・文化に想いを馳せることができました。常に何かに追われがちな現代社会において、一粒のお米と真摯に向き合う時間は、とても豊かなものだったと感じています。
小千谷の棚田米を未来につなぐために
まずは無事に審査が終わったこと、そしてこの素敵なコンテストに関わることができたことを、とても嬉しく思っています。
今回参加して改めて思ったのは、美味しいお米や豊かな食生活は、本当にたくさんの方たちの努力によってつくられているということです。特に棚田は、地形的に農業機械が入りづらく、通常の田んぼよりも収量が確保しづらいといった課題もあり、維持には相当の労力が必要になってきます。それでもなお創意工夫をもって棚田米の生産を続けている農家のみなさんには、心からの感謝をお伝えしたいです。
近年、物価高や食生活の多様性、担い手不足、政策などさまざまな影響を受けて、お米が現代の食卓から姿を消しつつあります。物心つく前から食卓に当たり前のように存在していたお米がなくなってしまうのはとても悲しいことですし、この先も美味しいお米を食べていきたいと強く思いました。
未来に棚田やお米を残していくために、私たち生活者ができることはなんでしょうか。それは、まず農業や米づくりのことを知ることだと思います。「おぢや棚田米コンテスト」は、私たちのような県外の人たちに棚田米の魅力を発信するうえでとても重要な役割を果たしていると感じますし、まちを挙げて棚田を盛り上げることで地域のみなさんが米づくりに関心を持てる仕組みも素晴らしいです。

食べ物の背景にあるストーリーを知ることで、料理も一層美味しく感じられ、食事の時間も豊かになると信じています。
今回のコンテストや本レポートを通じて、小千谷の棚田米の美味しさや生産者のみなさんの想いが伝わり、興味を持ってくれる人が少しでも増えると嬉しいです。
岡澤修平 第2回おぢや棚田米コンテスト 特別審査員
三重県伊賀市出身。大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業、事業構想大学院大学修士課程修了。
広告制作会社、広告代理店等で10年以上コピーライターとして勤務。2020年独立。
これまでにメーカー・教育・ライフスタイル・ITなど、幅広い業種のコピーライティング・プランニング・ディレクションを担当。
忍者の里・三重県伊賀市の出身者として、忍者研究や事業構想にも取り組んでいる。
第51回日経MJ広告賞「大賞」、第27回京都広告賞「京都商工会議所会頭賞」受賞。


