田んぼに実った稲のもみ殻を取り除いた「玄米」。
白米との違いは、薄茶色の「ぬか」と、成長して芽になる「胚芽(はいが)」が付いていることです。そして、この「ぬか」と「胚芽」には、ビタミンやミネラル、タンパク質や食物繊維が豊富に含まれています。
「玄米は体にいい」ことはよく知られていますが、「炊き方が面倒」「炊いても硬くて粘りがない」「お米の甘みが感じられない」などが難点でした。
しかし、発芽玄米は白米と同じように炊けるだけでなく、食べにくさも解消できます。
発芽玄米のメリットとは?
玄米のぬかには、発芽前に酸化して腐ることを防ぐアブシシン酸(ABA)が含まれています。
ABAは人体に入ると、消化と代謝の働きをする酵素を阻害し、消化不良や下痢などを引き起こしますが、水に浸けることで毒素を抜くことが可能です。
さらに、発芽させると食物繊維が増え、栄養価も高まることが分かっています。
1. 便通のサポート
白米と同じように柔らかく、消化のよい状態で炊くことができる発芽玄米。現代人にとって大きな悩みの種である便秘の予防にも役立ちます。
運動不足による腸の動きの鈍さや、質の悪い食事が原因となり、腸内に食べかすが腐敗したまま留まると、さまざまな体の不調を引き起こすことも少なくありません。
発芽玄米に豊富に含まれる食物繊維と、フィチン酸という成分は、腸内の不要物質や毒素を吸着し、便として排出する働きがあります。
2. 美肌のサポート
肌の状態は、腸内環境と関連性が大きいと言われています。「便秘になると肌荒れする」のはよくあることでしょう。
腸内環境を整えることが、肌トラブルを改善する一つの鍵です。
発芽玄米は腸内環境を整えるだけでなく、シミの元になるメラニン色素を抑えるフェルラ酸や、肌を紫外線から守るトコトリエノール、傷ついた細胞の代謝を助けるビタミンB群、抗酸化作用で肌の健康をサポートするビタミンEを含んでいます。
発芽玄米食は、健やかなお肌を保ってくれるでしょう。
3. 血糖値のサポート
炭水化物に含まれる糖質は体内で消化・吸収され、ブドウ糖=グルコースという物質になり、血液中に入ってエネルギーになります。血液中のグルコース濃度が血糖値です。
発芽玄米の豊富な食物繊維は、糖の吸収をゆるやかにする作用があり、糖尿病や動脈硬化のリスクを高めると言われる血糖値の急上昇・急降下=血糖値スパイクを抑制。
さらに、発芽により、血液の流れを良くするアミノ酸の一種「ギャバ=γアミノ酪酸」も玄米や白米に比べ増加しています。
4. 血中コレステロールのサポート
コレステロールは脂質の一種。細胞膜やホルモンなどの材料であり、体にとって大切な成分です。
全身にコレステロールを供給する「LDLコレステロール」と、余分なコレステロールを肝臓に戻す「HDLコレストロール」があり、両方のバランスが取れていれば問題ありませんが、LDLコレステロールが増えすぎると、血管の壁に入り込んで内側を狭くし、動脈硬化を引き起こす恐れがあります。
発芽玄米はコレストロールの増加を抑える食物繊維や、血液をサラサラにするフェルラ酸、アミノ酸などの成分を多く含む食品です。
5. 腹持ちのよさ
食欲は、脳の視床下部という部分でコントロールされています。
発芽玄米は健康によい栄養素を効率よく摂取でき、脳にもエネルギーが行き渡るので、視床下部の満腹中枢が正常に働き、必要以上の食欲を感じるケースが少なくなることが期待できるでしょう。
発芽玄米食を続けると、それまで食べ過ぎていた人も自然に食事量が減り、かつ栄養はきちんと摂れると考えられるため、健康的な食生活につながります。
6. ストレスの軽減
近年注目されている「ギャバ=γアミノ酪酸」。お菓子などでもギャバを含む食品が人気です。
ギャバは血管の収縮を穏やかにして血流を促進し、血圧を安定させるなどの働きをします。そのため、脳の血管性疾病の予防効果や、ストレスの軽減作用が期待できるでしょう。
玄米に含まれているギャバは、発芽玄米にすると2倍近く増加し、白米の約10倍にもなるのが特徴です。
発芽玄米にデメリットはないの?
「発芽玄米はいいことばかりのようだけど、デメリットはないの?」と疑問を感じた人もいるでしょう。
特に心配される2点について調べてみました。
1. 残留農薬のリスク
通常、稲の栽培には殺虫や殺菌の農薬を用います。
農薬は一般的に脂質に溶けやすいため、玄米のぬかや胚芽に残りますが、日本では食品衛生法の農薬基準値をクリアできなければ出荷できません。
市販されている玄米は安全性に問題ありませんが、発芽玄米として食べるのであれば、有機栽培米や無農薬米を選びましょう。
2. 細菌増殖の可能性
発芽玄米を作るにあたり、玄米を長時間、浸水させますが、この時「発芽毒」と言われる毒素を排出します。
水に小さな泡が湧き、濁ってきたら、発芽毒が溶け出したサインです。これは、水を替えることで解消できます。
玄米のぬかに含まれ、さまざまな病気の原因にもなるアブシシン酸(ABA)も水に放出されることで毒性が解除されるため、安心して食べることができるでしょう。
自宅での発芽玄米の作り方
発芽玄米は自宅で作ることが可能です。
手間や時間はかかりますが、自分で作った方が安心できるでしょう。ここではその方法を解説します。
1. 準備するもの
有機栽培、無農薬・無化学肥料栽培の玄米は、普通栽培米より割高に感じられるかもしれませんが、食べ応えがあり、白米より少量で満足できるでしょう。
そのため、農薬残留の心配がないこれらの玄米を使って発芽玄米を作ることをおすすめします。
以下が発芽玄米を作る際に準備するものです。
- 玄米を浸水させるボウルのような器
- ザル
- 水
2. 手順
- 玄米をボウルに入れ、浄水でさっと洗い流します。この時点で水分を多く吸収するので、浄水がベターです。
- 洗った玄米をザルに入れ、そのまま水を張ったボウルに浸けます。
- 水の状態を観察しつつ、17時間後に一度水を替え、その後13時間、計30時間ほど浸けます。
- 玄米の胚芽部分がぷくっと尖ってきたら完成です。
発芽玄米を美味しく炊くには
発芽玄米ができたら、さっそく炊いてみましょう。何回かやるうちに、上手に炊くコツがつかめます。
また炊飯後、冷凍保存も可能です。一度にたくさん炊いて、1食分ずつまとめて冷凍しておき、食べる時に電子レンジなどで解凍するとよいでしょう。冷凍庫で3~4週間は保存できます。
<注意点>
- 炊く前に水から出し、ザルでしっかり水を切ります。
- 炊飯器の場合…玄米モードを使うと簡単です。玄米モードがない場合は、白米より水を多めにして炊飯してください。
- 土鍋などでガス炊きの場合…炊きあがりの硬さの好みで水の量を調節して入れてください。硬めに炊き上げたい場合は玄米の量の1.3倍くらい、軟らか目にしたいなら1.5~1.8倍が目安です。
<炊く手順>
- 蓋をして中火にかけます。
- 沸騰したら弱火にします。
- 蒸気が蓋の穴から少ししか出なくなったら蓋を開け、水気がなかったら、また蓋をして火を止めます。
- そのまま10分ほど蒸らします。
発芽玄米は手軽に試せる
「発芽玄米、体に良さそうだけど、自分に合うのか不安」という人は、発芽玄米を提供しているレストランやカフェで、実際に食べてみてはいかがでしょうか。
また、最近では発芽玄米が市販されています。玄米を発芽させるのが面倒という場合は、利用するのも手です。ただ、発芽後に一度乾燥しているので、炊く前に30分~1時間ほど浸水しましょう。
ぷちぷちした独特の食感と、お米本来の甘みが生きた発芽玄米は、主食としてだけでなく、和洋中のさまざまな料理にアレンジしても旨味がたっぷりです。
ご自身の好みの食べ方を見つけて、おいしく、楽しく、食べましょう。