皆さんが郷土料理と聞いて思い浮かべるものはなんですか?
全国各地それぞれの地域で作り続けられてきた料理。そこには歴史やその地の文化が感じられるかと思います。この記事では新潟県の郷土料理「のっぺ」の特徴と小千谷のおばあちゃん直伝のレシピをご紹介します。
レシピは小千谷市若栃の民宿「おっこの木」の女将、渡辺むつこさんに教えていただきました。
新潟の郷土料理「のっぺ」とは「根菜を多く使ったとろみのある煮物」のこと
「のっぺ」は、新潟の代表的な家庭料理です。里芋、にんじん、ごぼうなど根菜をたくさん使ったとろみのある煮物で、中越地域の長岡が発祥の地だと言われています。
語源はとろみのあるという意味の方言「ぬっぺい」で「のっぺ」の他に「ぬっぺり」と呼ぶ地域もあり、漢字では「濃餅」「能平」などと書きます。
新潟の「のっぺ」と全国にある「のっぺい汁」との違いは「とろみ」の付け方
全国的に知られている「のっぺい汁」。とろみのある汁物で、使用する具材も「のっぺ」と似通っています。
一般的には、里芋で自然なとろみを付けたのが「のっぺ」、片栗粉でしっかりとしたとろみを付けるのが「のっぺい汁」と区別されています。しかし、新潟県内の方でも「うちは片栗粉を使っていました」という声もあり、地域や家庭ごとに作り方に違いがあるため、厳密な区分は困難です。
また、冠婚葬祭などの行事の際、仕出し料理でまかなうことが多くなった現在でも
「のっぺ」だけは手作りする家庭も多いそうです。「うちの味はこれ!」と、具材やとろみの加減など、多種多様のこだわりが感じられます。
このバリエーションの豊富さが新潟の「のっぺ」の特徴と言えるのかもしれません。
新潟県内の「のっぺ」の具材やレシピの違い
バリエーション豊富な新潟の「のっぺ」。その中でも興味深いと感じたものをいくつかご紹介します。
まず、海に面している村上市を中心に作られている海鮮をふんだんに使ったもの。だしにカマスやスルメイカを使い、根菜と鮭を煮込み、最後にととまめ(いくらをさっとゆでたもの、とと=魚)をちらします。
上越市では里芋ではなくじゃがいも、かんぴょうを使うのが特徴です。かんぴょうに煮汁がしみておいしそう…!とろみは片栗粉で付けるそうです。また新潟市近辺では鮭や鶏肉を入れることが多いそう。どれもおいしそうです。
のっぺを食べるのは「冠婚葬祭」や「普段のおかず」
のっぺは、冠婚葬祭の行事など大勢で集まる時にふるまわれることが多いと言われています。しかし、むつ子さんによると若栃では多めに作り置きして「普段のおかず」として食べているそうです。
「かあちゃんの作ったのっぺがいいって子どもたちにそう言われるからいっぺえこしらえておくんだぁ、若栃の正月料理はのっぺじゃなくて煮しめ。具をそれぞれ煮たやつをお重に詰めてふるまうの。正月料理を作るのはおばあちゃんの仕事なんだよ。」
小千谷のおばあちゃんの「のっぺ」に使う食材
のっぺは、地域や家庭によって具材が変わります。ここでは、むつ子さんのご家庭の具材を紹介します。具材の一覧は、以下のとおりです。
- 里芋 18個
- 干し椎茸 5個
- にんじん 1本
- れんこん 4個
- こんにゃく 1枚
- ユリ根 2個
- かまぼこ 1個
- 鶏肉 200g
- 銀杏(ぎんなん) 適量
- 貝柱(乾燥) 適量
- 醬油 適量
- めんつゆ 適量
- みりん 適量
干し椎茸、貝柱は、調理の2日前程度から水で戻しておくそうです。
むつ子さんの「のっぺ」の特徴は、里芋だけでとろみを付けることです。「里芋の中でも「どたれ」っていう品種は特にとろみが強いんだよ。」と教えてくれました。
また「このれんこんは『芽れんこん』っていうの。おっきいレンコンの脇に出るやつでやわらかいのが特徴なの。」「昔はこんにゃくも栽培からやる農家もあったね、やせた土地でも育てやすいから」と聞き、それぞれの具材がこの地域ならではのものだと感じました。
他にもご近所さんからのおすそわけの「銀杏(ぎんなん)」、立派な「しいたけ」など秋の味覚がずらりと並びます。
小千谷のおばあちゃん直伝「のっぺ」の作り方
いよいよ、むつ子さん直伝ののっぺの作り方を、次の簡単3ステップで紹介します。
1.具材を切る
まずは里芋、にんじん、ごぼう、れんこんの皮をむきます。れんこんは水にさらしてからそれぞれひと口大の乱切りにします。
こんにゃくも水にさらしてからスプーンでひと口大にちぎっていきます。水に戻した干し椎茸は軸を取り除いて薄くスライス。鶏肉もこまかく切っていきます。
「肉を大きく切ると子どもがそればかり拾うからむつこ流は細かく切ります!」
「あら、やっぱりかまぼこはあった方がいいねぇ、華やかになるもの」かまぼこは薄くスライスします。
ユリ根という食材は、あまり馴染みのない方も多いかもしれません。ユリ根とは、その名の通り、ユリの球根です。ユリ根は、包丁を使わなくても、手でほぐせます。
2.味付けをする
干し椎茸、貝柱の戻し汁を鍋にあけ、そこに貝柱をほぐし入れ強火にかけます。沸騰したら水、しょうゆ、みりん、めんつゆを適量入れ、濃いめの味付けにします。
「根菜からはあまり汁が出ないから汁は多めね、調味料の分量?そんなの目分量よ!簡単にできなきゃ続かないでしょ!」とむつ子さん。
3.煮る
味を整えたらまずは火が通りにくい具材、鶏肉、ごぼう、こんにゃく、ぎんなん、しいたけを入れてふたをして強火で煮ます。
その間に出てきたアクを取りつつ、根菜がやわらかくなった頃合いで里芋を入れます。
最後にユリ根を入れさっと火が通ったら火からおろし、器によそってかまぼこをちらしたらできあがりです。
具だくさんで汁が多めのさらっとした仕上がりになりました。
お待ちかねの試食です。できたてをお茶請けとしていただきました。椎茸と野菜のだしがしっかりついていてじんわりしみる。つい、ご飯がほしくなってしまう味付けです。ごろごろと具だくさんで食べ応えがある!
なんだか懐かしい味で幸せな気持ちになりました。
のっぺのレシピは家庭によって違う!ぜひうちの味を見つけてみてください
今回「のっぺ」について取材して、いろんな具材を使ってもまとまるおおらかな料理だなあと実感しました。我が家では「のっぺ」を作る習慣がなかったのでこれから「うちの味」を見つけたいです。