大晦日に食べる料理と言えば何を思い浮かべますか?「お寿司」や「カニ」なんかが思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。この記事では、新潟県魚沼地方で大晦日に食べていた、そして今も伝えられている料理を紹介していきます。
紹介している料理とそのレシピは、小千谷市岩沢地区のお母さんたちが作成した冊子「岩沢のごっつお」を元にしています。新潟魚沼地方の伝統食や生活について興味のある方は、ぜひご覧ください。
新潟県魚沼地方の12月から大晦日の食事
農文協が発刊している日本の食生活全集という本があります。全国の食文化を紹介している本で、新潟については第15集「聞き書き 新潟の食事」で解説されています。
こちらの本は、主に旧川口町(現長岡市)での聞き取りを元にしており、大正時代の終わりから昭和の初めのころを再現したものとなっているそうです。
「四季の食生活」という章では、12月から大みそかまでの食事について以下のように書かれています。
※『』の引用部の月日は本の記述のままです。旧暦での記載もありますが、見出しの月日は新暦で記載しています。
- 12月5日 夕飯にごっつおがつく
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『十二月五日はえびすさまの年とりで、豊作を感謝するとともに、身上(しんしょう)のよくなることをお祈りし、夕飯にごっつおがつく。』
- 12月9日 夕飯は白米にあわを少し入れた小金飯を炊く
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『十二月九日は大黒様の年とりで、夕飯は白米にあわを少し入れた小金飯を炊く。』
七福神の「大黒様」を祭る日です。大黒様は農業の神様ですね。大黒様にちなんで「黒豆」を食べるという地域もあるようです。新暦の12月9日に行われることが一般的のようです。 - 12月22日 かぼちゃを煮て食べる
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『冬至にはかぜをひかないといって、かぼちゃを煮て食べる』
冬至にかぼちゃを食べるという習慣は現在でも残っていますよね。かぼちゃは栄養価が高いため、かぜ予防に効果的だと言われています。 - 12月23日 焼き大根なますをつくる
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『大師講(だいしこう)である。焼き大根なますをつくる』
「大師講(だいしこう)」の大師とは、弘法大使のこと。この日は弘法大使を祭る日です。一般的には、旧暦の11月23日頃に行われる行事のようです。私はあまり聞いたことがありませんでした。。 - 12月24日 正月用の納豆をつくる。この日から正月ごっつおの準備がはじまる。
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『一月二十四日までに煤払い(すすはらい)を終え、二十五日は「納豆五日(なっとうごち)」といって、正月用の納豆をつくる。この日から正月ごっつおの準備がはじまる。』
そしてここから正月ごっつお作りが始まると、1週間弱の勝負です。1月24日は旧暦での年末になりますね。 - 12月28日か30日 もちを搗く
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『二十八日か三十日にもちを搗き、二十九日には搗かない。神さまに上げるふくで(鏡もち)をつくり、残りは平らにのして、長四角に切って雑煮にする。』
いよいよ年の瀬がせまるともちを搗くのは理解しやすいですが「29日には搗かない」とありこれには何か意味があるのでしょうか。 - 12月31日 大晦日のごっつお
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『一月三十一日は年とり。白いまんまに煮もん、きんぴら、煮なます、こぶ巻き、みざい豆と黒豆の煮豆など。なくてはならないものは年とり魚といわれる塩引きさけであり、不作の年などは塩ますのこともある。』
そしていよいよ大晦日は、ごちそうが並びます。旧暦の大晦日は現在の1月31日になります。
大晦日のごっつおの中でも目玉は、年とり魚と言われる「塩引き鮭」ですね。最近では「カニ」を食べるご家庭も多いかと思いますが。鮭については、以下のような記述もあります。
塩ざけを切るのは男衆の仕事で、神棚の前で包丁さばきをし、しっぽを神棚につるしておく。
いちのひれはえびすさま、その下は、じさ、ばさ、とと、かか、あに、おじ、あね、おば(祖父、祖母、父、母、長男、次男以下、長女、二女以下)の順に、一切れずつ焼いてお膳につける。
年とり神さま(歳徳さま)と正月帰ってこない家族へのかげ膳として、同じ膳を用意する。座敷の床の間に上げ、家内中でおまいりしてから膳につく。
男衆には何本も出る酒、女衆と子どもたちにはお膳についた歳暮銭(お年玉)。楽しい年とりの晩である。一年中で最大のごっつおの日である。
聞き書き 新潟の食事 日本の食生活全集15|農文協
塩引き鮭って、神棚に吊るすんですね。というか室内ですが、、昔とは家の造りが違うことを感じさせる記述です。
このように見ていくと、本当にお正月に向けた料理づくりは大仕事ですね。12月28日まで外で働いて、そこからゆっくりしてたら、あっという間に大晦日になっているなんて言うのが私の年末ですが、なかなか大変です。
次章では、小千谷市岩沢地区で伝わる大晦日の料理を紹介していきます。
新潟県魚沼地方(小千谷市)の大晦日の料理レシピ4選
小千谷市岩沢地区に伝わる大晦日の料理は、冊子「岩沢のごっつお」から4つ紹介します。
- ひら(煮上げ)
- 煮なます
- 黒豆の煮豆
- けんちん汁
レシピも紹介しているのでぜひ作ってみてください。
残したおきたい、伝えたい
岩沢のごっつぉ
(岩沢まごころ市)
小千谷市岩沢地区では、郷土に伝わる料理を「岩沢のごっつお」という冊子にまとめています。
冒頭では「地域の伝統食は文化であるとともに家族の健康を守る基本ではないかと思っています。」と綴られています。
冊子では「季節の料理」「豆料理」「漬物」「山菜」などのカテゴリに分けられて約70ものレシピが紹介されています。
1. ひら(煮上げ)
「ひら」とは、いわゆる煮しめのようなものですね。煮しめは全国にありますが、具材に違いはあるものと考えられます。小千谷市では、さといもやこんにゃく、昆布と言ったあたりが主役と言えるかもしれません。
- さといも(八ツ頭)・300g
- にんじん・・・・・150g
- レンコン・・・・・250g
- 干し椎茸・・・・・中50g
- ごぼう・・・・・・150g
- こんにゃく・・・・200g
- 昆布・・・・・・・70g
- がんもどき・・・・7枚
- ごぼうを塩ひとつまみ入れた水でアクを抜く
- 昆布は結び、水で戻す
- こんにゃくは茹でてアクを抜く。
- 1~6の材料を大きめに切る
- 1~8の材料を以下の方法で煮る
- さといも:一度茹でた後、3カップのだし汁で煮る
- にんじん:だし醤油で煮る
- レンコン:だし汁で蓋をせずに煮る
- 椎茸:もどし汁・砂糖・醤油を各大さじ2杯入れて煮る
- ごぼう・こんにゃく・こんぶ→一緒にだし汁で煮る
- がんもどき:油ヌキをしてだし汁で煮る
2. 煮なます
「なます」とは、にんじんや大根を酢を主とした調味料で味付けして生で食べるイメージですよね。小千谷の「煮なます」は、千切りしたにんじんや大根、鮭などの上に煮汁をかけます。
- 大根・・・・・1本(1.5kg程度)
- にんじん・・・1/2本
- 長ねぎ・・・・・1/2本
- 醤油・・・・・おおさじ4
- 砂糖・・・・・おおさじ4
- 酢・・・・・・おおさじ4
- みりん・・・・おおさじ1
- 塩鮭・・・・・大1切れ
- 大根・人参を千切りにする
- 水500ccに4~7の調味料を入れてを沸騰させだし汁を作る
- だし汁に大根、塩鮭、ねぎの半分を入れる
- 最後に残りのねぎを上にかざる
3. 黒豆の煮豆
黒豆の煮豆はお正月料理の定番とも言えますね。「まめに働く」「日に焼けるほどまめに元気で働けるように」「黒色は邪気を払う」などの意味合いがあります。
圧力鍋があれば比較的簡単にできるのでぜひ挑戦してみたい料理の一つです。
- 黒豆・・・400g
- 砂糖・・・おおさじ25
- 醤油・・・おおさじ1
- みりん・・おおさじ1
- 塩・・・・小さじ1
- 良く洗った黒豆と水800ccを圧力鍋に入れて火をかける
- チンチン音がしたら火を止め、そのまま1時間ほど置く
- また火を入れチンチン音がして3分で火を止める
- 冷ました後、砂糖・醤油・みりん・塩を入れて弱火で沸騰させる
4. けんちん汁
けんちん汁は、秋から冬にかけての定番の汁ものです。野菜を炒めて、醤油ベースのだし汁で煮て作ります。野菜がいっぱいあるので、切るのが大変ではありますが、定番料理として身につけておきたいですね。
- きのこ(あまんだれ)・・・800g
- さといも・・・中4個
- にんじん・・・中1本
- ごぼう・・・・30cm
- 大根・・・・・中1本
- 油揚げ・・・・3枚
- とうふ・・・・1/2丁
- だし汁・・・・1,000ml
(水900ml、醤油100ml、酒大さじ1、塩少々)
- さといも・にんじん・大根の皮をむき、3センチ位の短冊切りにする
- ごぼうをささがきにして水に浸しアクを取る
- 油揚げを熱湯で油ヌキをして短冊に切る
- 鍋に油を入れ熱し、きのこ、野菜を炒める
- だし汁を入れて、煮立てる
- 煮立ったら豆腐を入れ、調味料で味を調える
新潟県魚沼地方(小千谷市)の大晦日は手間をかけた美味しい料理がいっぱい
本記事で紹介したレシピは、小千谷市岩沢地区のお母さんたちが作った「岩沢のごっつお」という冊子を参照しています。伝統的な料理は、地域の文化を残すことに加えて、家族の健康を守る大切なものです。こちらで紹介した料理をぜひ一つでも作ってみてください!作った感想があれば、ぜひこちらにコメント送ってもらえるとうれしいです。