忙しい毎日を過ごしていると、「ご飯の保存を忘れてしまい、常温で一晩放置してしまった」という経験がある方も多いでしょう。しかし、「一度加熱しているから大丈夫」と過信して食べてしまうと、のちのち体調不良に見舞われる可能性があります。
本記事ではご飯を常温で一晩放置した場合の対処法について、季節別に解説します。傷んだご飯の見分け方や、安全かつおいしく保存する方法もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ご飯を常温で一晩放置してしまったけど食べられる?
こちらでは常温を「15℃〜25℃(※)」と仮定します。炊飯器の保温状態で放置した場合ではありませんので、ご注意ください。お米炊飯器から出した状態で、15~25℃の室温の場所に一晩放置したということが前提になります。
※厚生労働省では、常温の定義を「外気温を超えない温度」としており、明確な温度は定めていません。
食中毒の恐れがあるため「食べないほうがよい」
常温で一晩放置したご飯は食べずに廃棄した方が良いでしょう。セレウス菌という細菌の活発化によって、食中毒になる危険性があるためです。
セレウス菌は常在菌(※)の1つですが、10℃〜30℃になると「芽胞(がほう)」と呼ばれるバリアを作ります。すると加熱しても死滅しにくくなり、増殖の過程で毒素を出し続けます。
※自然界に広く分布し、お米などの穀物や野菜などに付着している土壌細菌
加えて、常温のご飯はセレウス菌にとって栄養豊富で、増殖しやすい環境です。このようにご飯を常温で一晩以上放置するとセレウス菌が非常に多くなるため、自分や家族の健康を守るうえでは食べずに廃棄すべきといえるでしょう。
食中毒の症状
セレウス菌によって食中毒になると、以下のような症状が現れます。
症状が現れるタイミング | |
---|---|
嘔吐 | 食後30分~6時間 |
腹痛や下痢 | 食後6時間~15時間 |
毒性はそれほど強くないものの、体調が万全ではないときは重症化の恐れもあります。とくに、体の抵抗力が低い子どもや高齢者は要注意です。次項で紹介する傷んだご飯の特徴を知って、食中毒の感染を未然に防ぎましょう。
常温で一晩放置したご飯が傷むとどうなる?
常温で一晩放置したご飯は、傷むと以下の点に普段と違いが生じます。
- 見た目
- 臭い
- 味
それぞれ詳しく見ていきましょう。
見た目の違い
常温で一晩以上放置したご飯が傷むと、以下に挙げる見た目の特徴が現れます。
- 炊いたときと色が違う
- 箸ですくうと糸を引く
- 普段よりも粘り気が強い
ご飯の色が一部緑や青に変わっている場合はカビの可能性が高く、フワフワとした白い付着物も同様です。また、「糸を引く」「粘り気が強い」といった特徴があれば、もはや腐敗している状態といえます。
上記のような特徴が見られた場合はもったいないと思わずに、素早く廃棄しましょう。
臭いの違い
傷んだご飯は、以下のように臭いでも違いが現れます。
- 酸っぱい臭いがする
- 納豆のような腐った臭いがする
上記以外にも、普段と違った臭いがする場合は要注意です。お米の臭いに違和感がある場合の原因や対処法について知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
味の違い
常温で一晩以上放置したご飯を食べたとき、酸っぱい味がする場合はすぐに吐き出して口をゆすぎましょう。酸っぱい臭いと同様に、ご飯が傷んでいる可能性が非常に高いためです。
とくに炊き込みご飯は通常よりも水分が多く、傷みやすい傾向があります。酸味を強く感じるだけではなく、「なんとなく、いつもと違う味がする」と違和感がある場合はすぐに食べるのを止めましょう。
【季節別】ご飯を常温で一晩放置したときの対処法
ここではご飯を常温で一晩放置したときの対処法を、季節別に解説します。
- 春・秋:半日以内なら食べられる
- 夏:短時間でも食べないほうがよい
- 冬:半日~1日以内なら食べられる
ただし100%安全に食べられる保証はないため、あくまでも目安にしてください。それぞれ詳しく見ていきましょう。
春・秋:半日以内なら食べられる
春や秋は気温・湿度が高すぎないため、半日いないであれば安全に食べられます。朝に炊いたご飯を昼や夜に食べるなどであれば、よくしている方も多いでしょう。
保存のポイントは、直射日光を避けて涼しいところに置くことです。ただし、近年では春の終わりや秋の始まりは暑い地域も多いため、夏の対処法とあわせて臨機応変に対応しましょう。
夏:短時間でも食べないほうがよい
夏場は短時間の常温保存であっても、食べないほうが無難です。気温や湿度が高くなり、細菌の増殖スピードが早まるためです。
とくに梅雨の時期は湿度が非常に高まり、カビも生えやすくなります。自分や家族の健康を第一に考えるのであれば、夏場は1回に食べきれる量だけ炊く、あるいはのちほど紹介する常温以外の保存方法に切り替えましょう。
冬:半日~1日以内なら食べられる
冬場は半日〜1日以内のご飯であれば、常温保存のものでも食べられる可能性があります。夏場と異なり気温・湿度ともに低く、セレウス菌の増殖スピードが遅くなるためです。
ただし、暖房を付けて温度が高くなっている場所はなるべく避けたほうがよいでしょう。
ご飯を安全かつおいしく保存する方法
最後に、ご飯を常温以外で安全かつおいしく保存する方法を3つ紹介します。
- 炊飯器の保温機能を使う
- 冷蔵庫で保存する
- 冷凍庫で保存する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
炊飯器の保温機能を使う
炊飯器の保温機能を使うと、ご飯は24時間ほど日持ちします。70℃前後の高温状態が保たれ、細菌の増殖スピードを抑えられるためです。
ただし、長時間の保温は以下のデメリットがあります。
- ご飯が乾燥してパサつく
- メイラード反応によって黄色く変色する(※)
- 電気代がより多くかかる
※おこげのように焼き色が出る化学反応
上記のデメリットを避け、おいしく食べられる保温時間の限度は5〜6時間程度です。そのため、朝に残ったご飯を昼に食べるなど、保存時間が短い場合に活用するとよいでしょう。
なお、乾燥しすぎず、ベチャベチャにもならない保存方法として、木製のおひつも有効です。木の調湿効果によってほどよい湿度が保たれるため、炊き上がりと同じようなおいしさを求める方は購入していてはいかがでしょうか。
冷蔵庫で保存する
半日〜1日以内に食べる場合は、冷蔵庫での保存がおすすめです。具体的には、ご飯を冷ましてからラップに包んで冷蔵庫へ入れます。
熱が残っているとラップの中に結露が生じ、雑菌の繁殖を促してしまうため、しっかり冷ましてから保存しましょう。
冷凍庫で保存する
1日〜1か月以内に食べる場合は、冷凍庫での保存がおすすめです。以下の手順で急速冷凍すると、2〜3週間ほどもちます。
- アツアツのご飯をラップに乗せて粗熱を取る(5分ほど)
- ご飯を薄く伸ばしてラップを閉じる
- 金属トレーなどに乗せる
ラップ以外にも、フリーザーバックなど密閉性が高いものであればOKです。ただし、冷めてから冷凍しようとすると、デンプンがのりのように固まり食感が悪くなります。そのため、冷蔵庫と異なり、熱はある程度残った状態で保存するのがポイントです。
なお、解凍する際は水滴が出てくるまで一度室内や冷蔵庫に置きましょう。その後、電子レンジの通常モードで温めるとふっくらとした状態に戻りやすくなります。
ご飯を常温で一晩放置した場合は食べないほうがよい
ご飯を常温で一晩放置した場合は、セレウス菌の増殖による食中毒の恐れがあります。たとえ目に見えて傷んでいなくても、食べずに廃棄するのが無難です。
炊いたあとは適切な方法で保存し、安全かつおいしいご飯を食べられるようにしましょう。