「ゆきむすび」は、宮城県大崎市の鳴子温泉の景観を守る取り組みの中で生まれた品種です。地域の人たち自らが、米づくりを続けるために知恵を出し合い、2010年に品種登録するまでにこぎつけました。
その過程では、米の作り手と支え手(買い手)の関係を築き、安心して米づくりを続けられる仕組みを作るなど、画期的な取り組みが数多く作られました。
この取り組みは「鳴子の米プロジェクト」として、全国にも知られる存在となりました。この記事では「ゆきむすび」の特徴と合わせて「鳴子の米プロジェクト」の物語を紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
栽培期間 | 早生 |
来歴 | 東北157号(後の「はたじるし」)×東810 |
育種 | 宮城県古川農業試験場 |
品種登録日 | 2010年3月 |
鳴子の米プロジェクト「ゆきむすび」の特徴
「ゆきむすび」は、低アミロース品種で、粘りの強さや冷めても硬くなりにくいことが特徴です。
食味は「ひとめぼれ」や「スノーパール」よりも優れていると評価されています。冷めても硬くなりくいため、冷蔵・冷凍保存にも適しています。
耐冷性が強く、いもち病などの病気にもなりくいため、安定して高品質のお米が提供されています。
項目 | 内容 |
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食味 | 粘りが強い |
粒の形 | 中粒で厚い |
他特徴 | 冷めても硬くなりにくい |
ゆきむすびを生んだ「鳴子の米プロジェクト」の概要
ゆきむすびは、宮城県大崎市の鳴子温泉の景観を守るために始まった「鳴子の米プロジェクト」で生まれた品種です。こちらでは、鳴子の米プロジェクトの経緯から、地域の人たちの思いを紹介します。
- プロジェクトスタートの経緯
- 耐冷品種「東北181号」の発見
- 作り手と支え手をつなぐ仕組み
- ゆきむすびのおにぎりを購入できる「むすびや」
これを読めばきっと、皆さんも「ゆきむすびを食べてみたい!」「鳴子の米プロジェクトを応援したい!」という気持ちになると思いますよ。
1. プロジェクトスタートの経緯
宮城県の最北部、大崎市の山間部に位置する鳴子は、温泉郷やこけしの産地として知られています。元々は「鳴子町」という独立した自治体でしたが、2006年に大崎市に合併しています。
鳴子町では昔から稲作が行われていたものの、標高が高く寒冷で日照時間も短いため決してお米づくりに向いた土地とは言えませんでした。小規模農家が複合経営で米や高冷地野菜、畜産を行ってきましたが、遊休地や耕作放棄地が増え、鳴子温泉の景観も荒廃する危機に直面していました。
この状況を打開するため、2006年に「鳴子の米プロジェクト」がスタートしました。農家、観光関係者、加工・直売所グループの30名が集まり、「鳴子温泉地域からこの風景をなくさないために鳴子の農業を地域みんなの力で守っていこう」という思いを共有しました。
2. 耐冷品種「東北181号」の発見
そんなときに見つけた品種が、のちの「ゆきむすび」となる「東北181号」という耐冷品種でした。この品種は、平成13年に誕生し、耐冷、耐病、良食味を目指して開発されたものの、それまで日の目を見ることはありませんでした。
「東北181号」をプロジェクトのシンボルにするため、はじめは鬼首(おにこうべ)地区の農家3軒で試験栽培が行われました。試験栽培した結果、冷涼な気候に適した「東北181号」は、栽培しやすく、美味しいお米であることがわかりました。「東北181号」の発見は、農家が再び米作りへの希望を持つきっかけとなりました。
3. 作り手と支え手をつなぐ仕組み
さらに鳴子の米プロジェクトでは、予約購入する「支え手」を確保することで、農家が安心して米作りに取り組める仕組みを構築しました。1俵24,000円で支え手が購入し、そのうち18,000円が農家に渡り、残りの6,000円が事務経費と若い担い手を育成する事業資金に充てられる仕組みです。
この取り組みにより、2007年産米は収穫時に予約完売し、農家たちに誇りと手ごたえをもたらしました。2008年には特定非営利活動法人(NPO法人)となり、恒常的な組織として「鳴子の米販売ネットワーク事業」、「鳴子の食の開発・販売事業」、「農と食の人材育成・交流事業」を進めることを目指しています。鳴子の米プロジェクトは、地域の農業と食を守り、未来へとつなげる取り組みとして、その意義を広め続けています。
4. ゆきむすびのおにぎりを購入できる「むすびや」
「むすびや」は「ゆきむすび」のおにぎりを販売するお店として、2009年にJR中山平温泉駅近くにオープンしました。2011年の東日本大震災で被災し、一度は取り壊されたものの、クラウドファンディングで270万円もの寄付を集め、2017年に復活オープンを果たしています。
ゆきむすびを使った各種おにぎりのほか、定食やテイクアウトのお弁当なども販売されています。
- 住所:〒989-6832 宮城県大崎市鳴子温泉字星沼77-84 NPO法人鳴子の米プロジェクト事務所1階(JR中山平温泉駅から徒歩2分)
- 連絡先:TEL 0229-29-9436 E-mail komepro181@yahoo.co.jp
- 営業時間:11:30~13:30
- 定休日:毎週水曜日
※年末年始、お盆期間、悪天候の場合などにお休みをいただくことがあります。遠方からお越しの際には、念のため、下記連絡先でお確かめください。
鳴子の米プロジェクト「ゆきむすび」のインターネットでの購入方法
「ゆきむすび」は大手インターネットモール、ふるさと納税の返礼品で手に入れられます。インターネットモールでは、10kg、30kgの単位で販売されています。
ふるさと納税では大崎市の返礼品として受け取れます。3kgを10回に分けて配送する定期便になっています。1回で終わらずに、約1年間届くという仕組みに、作り手と買い手の関係を築きたいという思いが伝わってきますね。
項目 | 内容 |
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ネット販売価格 | 4,800円/10kg |
ふるさと納税額 | 120,000円/3kg×10回 |
ネットショップで購入
ふるさと納税の返礼品
鳴子の米プロジェクト「ゆきむすび」をぜひお試しください
「ゆきむすび」は、宮城県大崎市の旧鳴子町の地域おこし活動として生まれた品種です。元々米づくりに向いていなかった高地で、耐冷性のある品種を見つけてきて、新品種として登録した熱意には頭が下がります。
また作り手と支え手(買い手)の関係を築く仕組みの構築は、地域を守るということだけではなく、日本の食や農業にも新しい提案をしたプロジェクトと言えます。
「ゆきむすび」に興味を持った方は、ぜひ「鳴子の米プロジェクト」に支え手として参加してみてはいかがでしょうか。