無洗米

「無洗米」とは、洗わなくても炊飯できるように加工されたお米のことを指します。

無洗米には、洗う手間や時間の節約以外にも、さまざまなメリットがあるのが特徴です。

今回は無洗米と普通の白米の見分け方を、無洗米を美味しく炊くコツなどの豆知識を織り交ぜながら解説します。

「無洗米がおいしく炊けない!」という方はこちらの記事をご覧ください。

無洗米のデメリットとは|まずい?美味しく食べるコツを紹介

無洗米と普通の白米との違いは?

田んぼで収穫されたばかりのお米は、籾という殻に包まれています。この籾を取り除いたものが「玄米」で、ヌカがついた状態であり、色は茶色です。

この玄米からヌカを削り取って白米(精白米)にすることを精米といいます。

白米の表面には、精米する時に、お米から剝離したヌカの一部が再び付着します。この粘着性の強いヌカを肌ヌカと呼びます。この肌ヌカが、お米を洗った時のとぎ汁を白く濁らせます。

無洗米は、精米した後に肌ヌカを完全に取り除く加工をしたお米のことで、炊飯の前に洗わずに炊くことが可能です。

無洗米は肌糠を完全に取り除く加工したもの

無洗米の見分け方ってある?

市販されている無洗米の袋には、しっかりと無洗米と表記されています。そのため、普通の白米と間違うことはないでしょう。

しかし、保存するため容器に移してどちらかわからなくなったということも珍しくありません。そこで、無洗米の見分け方をご紹介します。

無洗米の見分け方はとぎ汁と糠臭さ

無洗米はとぎ汁に透明感がある

通常の白米は、表面に付着した汚れや肌ヌカを落とすために、ご飯を炊く前に「洗米」といって、お米を水洗いするのが一般的です。この時、とぎ汁は洗い落とされたヌカなどによって乳白色となります。

一方で、無洗米はお米を洗う必要がありません。洗ったとしてもお米に肌ヌカがついていないので、水は乳白色にならずに透明感があります

もし、普通の白米と無洗米の区別がつかなくなった場合には、少量をお米を洗ってみてとぎ汁の色を確認してみましょう。

無洗米はヌカ臭さがない

洗う前の白米の表面には、肌ヌカがついているので、ほんのわずかですが糠臭さを感じます

無洗米は、肌ヌカが完全に取り除かれているため、糠臭さがありません。

しかし、昔と違い最近の精米技術はとても高いので、一般的には臭いだけでお米の違いはわからないでしょう。

無洗米のメリット

お米の消費量が年々減り続ける中で、無洗米の品質検査などの活動を行ってる「全国無洗米協会」の調査によると、無洗米は20年で9倍以上も消費が増えたという統計があります。

無洗米の一番の特徴は、ご飯を炊く前に洗わなくてよいという利便性です。

他にもさまざまなメリットがある無洗米。ここでは、無洗米のメリットを紹介します。

無洗米のメリット

料理時間の短縮

無洗米は、炊く前にお米を洗う手間がないため、料理時間を短縮することができます。

共働きや育児で忙しいご家庭では、毎日の家事の時間や手間を少しでも短縮したいのではないでしょうか。賢い使い方をすると家事の時短ができます。

環境負荷が小さい

普通の白米の表面に付着している肌ヌカには、有機物や窒素、リン酸などが含まれているため、お米を洗うと、とぎ汁にこれらの成分が溶けだします。

現在の下水処理技術では、有機物は処理できますが、窒素とリン酸は十分に処理できません。

また、下水道が整備されていない場所では、そのまま川に流れ出すため水質汚染の原因となります。

無洗米はとぎ汁が出ないので、環境負荷が小さいこともメリットです。

栄養が逃げにくい

お米を洗うと水溶性ビタミンのビタミンB1やナイアシン、ミネラルなどの栄養やうまみがとぎ汁に溶けだします。

無洗米は、お米を洗う必要がないため、これらの栄養成分の流出を防ぐことが可能です。

無洗米のご飯と、洗米した白米のご飯を比較すると、無洗米のご飯には上記の栄養成分がおよそ2倍も多く含まれています。

栄養が逃げにくい

節水につながる

普通の白米3カップ(約450g)を洗う際には、約4.5リットルの目安で水を使います。1日3食ご飯を炊くと、1年間で2リットルのペットボトルで828本分の水が必要です。

無洗米であれば、ご飯を炊く前に、お米を洗う必要がないため、それだけの水の節約・節水につながります。

日常の食事だけでなく、災害時や夏の少雨による水不足、キャンプなどアウトドアで水を十分に使えない時などにもおすすめです。

冷水による手荒れが減る

調理で水を使う機会が多い主婦や飲食店で調理をする方の中には、手荒れで困っている人も少なくありません。

また、冬は水が冷たいので、お米を洗うのがつらいこともあるでしょう。

無洗米であれば、お米を洗わずにすむため、水仕事が減って手荒れ対策にもなります

無洗米のデメリット

前章では、無洗米のいろいろなメリットを紹介しましたが、一方で普通の白米と比較すると、次に紹介するようなデメリットもあります。

普通の白米か無洗米か購入を迷った際には、メリットとデメリットを理解して判断しましょう。

無洗米のデメリット

精白米より価格が高め

無洗米は、普通の精白米と比べると、若干値段が高めに設定されています。その理由は、精米した後に、無洗米にする製造工程が加えられるといった手間がかかるためです。

しかし、精白米には肌ヌカがついているため、お米を洗って肌ヌカを落とすと、同じ量のお米でも可食部分は無洗米の方が多くなります。

また、無洗米は水道代が節約できるので、価格については、それほどデメリットにはなりません。

浸水に時間がかかる

美味しいご飯を炊くためには、お米のでんぷん質をアルファー化(のり化)させることがポイント。アルファー化させるためには、しっかりとお米を浸水させることが必要です。

普通の白米は、洗っている時にすでにお米が水に触れています。一方洗う必要がない無洗米は、その分の浸水時間を長く取らなければならないイメージがあるでしょう。

しかし、実際には普通の白米と浸水時間は同じで構いません。ただ、ふっくらと美味しく炊きたい場合には長めに浸水しましょう。

しっかり浸水する

炊き上がりが硬めになる

普通の白米と無洗米を、同じ水加減で炊くと、無洗米の方が炊きあがりは硬めです。普通の白米は、お米を洗っている時に、一定の量の水を吸っています。

無洗米は、洗わずに水を注いで炊くだけなので、普通の白米が洗米の際に吸水する分の水を多くして炊く必要があることに注意しましょう。

銘柄を自由に選べない

私たちが主食としているうるち米は、農業の技術進化により品種開発が進んだため、今では800種類以上の品種があり、さらに毎年のように新しい銘柄が登場しています。

しかし、無洗米として販売されている銘柄はごく一部で、すべての銘柄が無洗米になっているわけではありません。

乾燥やニオイ移りしやすい

無洗米は、お米の表面の肌ヌカを取り除いているため、乾燥しやすい特徴があります。

また、乾燥しているため、ニオイを吸着しやすいのがデメリットです。無洗米は、ニオイが強い食品や食材を避けて、密閉容器に入れて保存しましょう。

加えて、お米は温度や湿度が低い場所が保存に適しています。冷蔵庫の野菜室が、お米の保存場所におすすめです。

無洗米を美味しく炊くための3つのポイント

かつて無洗米は美味しくないというイメージがありましたが、今は加工技術が向上して普通の白米同様に美味しいご飯が炊けるようになりました。

さらに無洗米を美味しく炊くためのポイントと注意点をご紹介します。

無洗米を美味しく炊くポイント

冷水でサッと洗う

無洗米に加工する際に、完全に肌ヌカを取り除こうとすると、お米への負担が大きくなりすぎるため、わずかに肌ヌカを残しているケースもあります。

基本的に、無洗米は洗わずそのまま炊くことができますが、気になる場合はサッと洗いましょう。

洗う際に、水の温度が高いとお米が割れる可能性があるので冷水を使用します。

お米が割れないように冷水でサッと洗う

水加減は少し多めにする

普通の白米の場合には、お米1に対して水の量は1.2ほどです。

しかし、無洗米はお米を洗う際の水の吸収がないため、普通の白米より水加減を少し多めにするのが、美味しいご飯を炊くコツになります。

水の量は、お米1に対して1.4〜1.5が基準です。

水加減を少し多めにする

しっかり浸水する

普通の白米同様に、無洗米もしっかり浸水することが大切になります。夏場は30分以上、冬場は1時間以上が目安です。

しっかり浸水する

なお、炊飯器に入れる際には水を入れてからお米を入れます。

お米の上から水を注ぐと、でんぷん質が浮き上がって、べたついた炊きあがりになるため注意が必要です。

無洗米をすぐ炊くとどうなる?

お米を浸水せずにすぐ炊くと、お米の表面だけがアルファー化して、中心部はアルファー化しないため、硬く粘りが少ない炊きあがりになるでしょう。

しっかり浸水しないと硬くねばりが少なくなる

ただし、最近の炊飯器には無洗米モードがあって、浸水が必要ない製品もあります。

自分に合ったお米を選ぼう

お米の写真

無洗米が登場したのは1991年で、当初はあまり美味しくないと言われました。

しかし、最近ではタピオカでん粉の製造装置など作り方が工夫され、普通の白米と変わらない美味しさと評判です。

無洗米を使うと、お米を洗う時間を節約できるので、その分いつもとは違った料理のレシピに挑戦してはいかがでしょうか。